AutoStore™は、ビンの準備またはビンの掘り起こしと呼ばれるプロセスを通じてロボットのワークフローを常に調整しています。このプロセスは、世界中で稼働している1,150以上のAutoStoreシステムのスループットを最大限に高めるために不可欠です。本記事と動画では、その仕組みについて説明します。
まず念頭に置くべきは、AutoStoreはマジックではないということです。その着想の種は、ルービックキューブにあります。1996年、Ingvar Hognalandは、ストレージの密度を向上させるアイデアを思いつきました。「ルービックキューブのように保管すればいいのに、なぜドミノのように保管するのだろう?」と。誰もがルービックキューブの解き方を知っているわけではありませんが、ルービックキューブの色が整えられていく様子を見るとわくわくします(余談ですが私はルービックキューブが大好きで、3分ほどで完成させるのが私の隠し芸ネタだったりします)。
マジシャンは決してタネを明かしません。でも私のようなエンジニアは違います。説明不可能なことや複雑なことの解明に役立つ科学的事実を、喜んで共有したいと思っています。ここでは、私が確信している2つの事実をご紹介しましょう。まず、ルービックキューブの解は、入念に計画されたアルゴリズムの積み重ねに過ぎません。そして同様に、AutoStoreの「マジック」は魔法ではなく、世界で最高密度のオーダーフルフィルメントエンジンに在庫を配置することによる論理的帰結なのです。
倉庫でもっとも大変な仕事のひとつ、スロッティングについてお話しましょう。この目に見えないコストは、日本語でいうところの「無駄」そのものです。在庫の並べ替えに人員を割くことは、コストの増大以外の何物でもありません。皮肉なことに、スロッティングは本来、移動距離を減らす方法のひとつでした。しかし今日のフルフィルメントセンターは、手作業で在庫を並べ替えるには商品数が多すぎます。
在庫保管システムのパフォーマンスは、たとえ手動であっても、スロッティングに応じて決まります。従来の自動倉庫システム(ASRS)でも、よく売れる人気商品は通路の前、つまりダブルディープまたはトリプルディープロケーションの外に保管されます。しかし、商品の需要は予測不可能なことが多く、決して安定せず、季節性も高いため、多くの場合、静的なスロッティングでは失敗します。
つまり、スロッティングは必要不可欠ですが、今や人が行うには非常に手間のかかるものとなりました。Eコマース市場は2025年までに年間7兆ドル規模に達すると予測される中、倉庫への負担は人間の手では凌げなくなっています。
その結果、一般的な倉庫オペレーターは、力仕事をするロボットがない限り難問に直面することになります。
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AutoStoreでは、次の3つの主要な前提に立ち、手作業によるスロッティングを完全に排除しています。
AutoStoreのパフォーマンスは、グリッド内に保管されている商品量や各SKUの配置状況に影響されません。AutoStoreのシステムは、「ナチュラルスロッティング 」と呼ばれる方法で高いパフォーマンスを実現しています。
使用済みのビンは、グリッドの最上層に戻され、格納されます。一方で、動きの遅いビンは、スタックの最下層に次第に降りていきます。この設計アイデアにより、ロボットがスタックの底まで掘り起こす必要がほとんどなくなります。
すべてのものがロボットによって在庫に入れられ、完璧に配置されることにより、倉庫からコストのかかる「無駄」がなくなり、高効率な自動化システムへと生まれ変わります。
一般的なAutoStoreロボット群の場合、時間の80%をビンの搬送に費やし、掘り起こしに費やす時間は20%のみです。掘り起こしの多くは、休憩時間や夜間など、他のシステムがアイドル状態の間に状況を見計らって行われます。
ロボットが掘り起こしを待つことは決してありません。注文に必要なビンは、ポートで処理される前に、倉庫管理システム(WMS)の優先順位に基づくビン準備を通じてプロアクティブに上層に置かれます。つまり、オペレーターを待たせることはないのです。
あるビンが予告なしに必要になる可能性も常にあります。最悪の場合、例えば突然の注文の場合などでも、底にあるビンの掘り起こしにかかる時間は3分36秒です。このようなことが頻繁に必要になる場合、当社は単にロボットを数台追加するだけです。
しかし、ビンの3分の1以上は掘り起こしが不要です。その理由について、一般的なAutoStoreのお客様の例を見てみましょう。システムは高さ7.62メートル(25フィート)で、グリッドに積み上げられたビンは16個相当です。この倉庫から出荷される商品の約80%は、在庫全体のわずか20%を構成するにすぎません。この80/20の法則に基づき、現状は次のような状態となっています。
AutoStoreは、ビンをリフトに載せて垂直方向に移動させる他のASRSシステムと比べ、同水準の効率性とより高速なオーダーフルフィルメントを実現できます。
さらに、ロボットの作業効率を高めるAutoStore独自の3つの機能により、掘り起こしの手間が軽減されています。
他の多くのシステムは移動距離が長く、ロボットは、倉庫内や通路を移動したりワークステーションで長い列に並んだりして時間を浪費しています。またソーターループやエレベーターを追加すると、ボトルネックや故障点の発生も増えます。
一方、平均的な AutoStore ロボットは、1時間に30個以上のビンを搬送できます。
システムのパフォーマンスの高さを証明する数値をご紹介しましょう。2023年3月6日現在、350台の AutoStoreシステムの平均掘り起こし深度はわずかビン2.6個分で、ビン16個分の高さのグリッド内で完璧な80/20の配分となっています。この統計は、幅広いお客様がいる中、AutoStoreの掘り起こし管理がいかに巧みかを示しています。
市場の他のどのシステムも、このレベルのパフォーマンスを実現できません。
すべてのAutoStoreは、お客様の期待するパフォーマンスを実現するようシミュレーションされています。実際に、各システムの設計、設置、試運転を行う統合パートナーのため、当社は1日に500以上の設計をシミュレーションして、さまざまなシナリオやロボット数をテストしています。最も重要な事項は、1)スループットを達成できたか、2)高いポート利用率を維持できたかです。
正確なシミュレーションテストにより、AutoStoreシステムを微調整して、高いパフォーマンスを発揮するよう最適化することができます。例えば、ボトルネックを発見したり、幅広いシナリオを検討したりすることで、最小限のロボットでビンの待機時間を最小化できます。
ハードディスクのどこにビットが保存されているかなど意識することはないのと同様に、グリッド内部の在庫管理はAutoStoreに一任できます。繰り返しますが、AutoStoreがもたらす稀有な効果はマジックではありません。必要なときに必要な商品をすぐ手にできるのは、完璧に整理されたキューブがあるからこそです。
AutoStoreにより、オペレーションチームはキューブ内で何が起こっているかを気にする必要がなくなり、代わりに最も重要なこと、つまりお客様の注文に応えることに時間を使うことができます。
“The solution to a Rubik’s Cube is merely a series of well-planned algorithms. Likewise, the 'magic' of AutoStore isn't magic at all, but the logical result of arranging inventory in the world’s densest order fulfillment engine.”