「買い主危険負担」とは、買い主は騙される可能性について自ら警戒すべきであるという商売上の原則です。倉庫の自動化に伴うリスクは、あなた自身や、ベンダー候補またはコンサルタントが事前に質問すべき事柄について知ることで回避できます。
倉庫の自動化を導入する上で最も面倒なステップの1つは、最も重要なステップでもあります。それは、倉庫オペレーションの現状と今後期待される成長とを正確に反映したデータを収集することです。これは多大な時間を要することのように見えますが、ロボティクス、その他のマテリアルハンドリング技術、ロジスティクス技術に投資する前に適切なデューデリジェンスをする時間を確保していない人にとって、このようなデータ収集は「買い主危険負担」のための強力な対策となります。ここからは、あなた自身やベンダーまたはコンサルタントが計画当初から問いかけ、回答を得るべき事柄をご紹介していきます。
ユニットロードとは、複数の最小在庫管理単位(SKU)で処理や輸送をするコストを減らすため、1つのユニットとして運ばれる大量のアイテムのまとまりを意味します。これらは通常、モジュラーサポートまたはパッケージ(箱、パレット、コンテナなど)にまとめられ、流動棚や倉庫内搬送機器などを備えた一般倉庫、予備倉庫、ピッキング倉庫といった作業場所で処理されます。
入荷後、ユニットロードは小さな要素に分割され、ピッキングと梱包を経て顧客へと配送されます。自動化をする際には、製品が大きいのか小さいのかを把握することが重要です。一般的に、持ち運びができるような製品は小さい部類に入ります。一方、高重量または形が特殊などで持ち運びが困難なものは大型の製品となります。ベンダーやコンサルタントは各SKUの寸法データを把握しておくことが理想で、これにより分析がかなり容易になります。彼らがあなたの製品の寸法、重量、形状、壊れやすさ、ケース数量について質問してくるかどうか確認しましょう。
注文番号、注文ライン、ユニット数、注文日といった注文データを共有することで、ベンダーやコンサルタントは現状のオペレーションで達成した直近のスループットを評価できます。これらのデータポイントはピーク期間と平均的期間の両方をまたいでいる必要があり、たいていは注文データの3か月分となります。将来を見据えた自動化ソリューションの導入を目指すなら、あなたのビジネスの成長目標を理解してもらう必要もあります。AutoStore™のようなソリューションの場合、これらのデータは倉庫に必要なロボットのタイプや数を決める際の判断材料にもなります。
次に検討すべきは、製品を保管する環境についてです。温度管理はされているか、冷蔵または冷凍が必要か。もしそうなら、これらの条件下でも稼働できる自動化ソリューションは限られているので、早めに指摘する必要があります。危険物や腐食性のある在庫品についても、自動マテリアルハンドリングに適しているか確認する必要があります。加えて、製品を隔離して特定のワークステーションで取り扱う必要があるかどうかを把握するため、在庫をセグメント化することも重要です。例えば、繊細な電子部品を販売する場合、倉庫システム内に専用の静電気対策ゾーンを設ける必要があります。
施設の寸法、形状、天井高や、ドア、ドック、保管エリアの場所など、倉庫の詳細なレイアウトや構成について共有しましょう。この情報により、ベンダーやコンサルタントはマテリアルフローの設計や技術の導入に最適な方法を特定できます。一つ重要なこととして、新規拠点の場合、実施設計図を最終決定する前に、自動化システムの計画を練る必要があります。この段階で、建築士や技師を、システム統合コンサルタントやベンダーの取り組みに関与させる必要があります。
スループット要件の計算に加えて、ベンダーやコンサルタントは質問2から得られたデータから注文品のサイズ分布やABC構成を計算できます。販売の大部分を占めるSKUを知ることで、商品のスロッティングを最適化できます。効率的なフルフィルメント業務にとって 効果的なスロッティングは不可欠であり、スロッティングを動的に管理する方法を理解することで、成功への道筋をつけることができます。
コンベアシステム、AS/RS(自動倉庫システム)、 WMSなど、倉庫にある既存のシステムやインフラについての情報を共有しましょう。このデータは、自動化技術をどのように既存のシステムに統合できるかをベンダーが判断する上で役立ちます。
倉庫で満たす必要のある安全基準や規制に関する情報を共有します。この情報により、チームは要件を満たす安全で信頼性の高いシステムを設計・開発できます。
最後はあなたから尋ねるべき事柄として、設計のコンセプトを証明する理論的または実際的なシミュレーションが提供されるのかを確認する必要があります。システムプロバイダーは「1時間あたり1000ピック」など、機械のピーク速度についてアピールすることがありますが、実際のピック速度はプロセスに左右されます。ある速度に到達するために、作業担当者が自動機械で何をすることになるのか、どのようなボトルネックに遭遇する可能性があるかを含め、全体像を把握するようにしましょう。シミュレーションにより、設計が業務上のニーズを満たすかどうかが分かります。これらのシミュレーションでは、既存の業務に基づいて計算された入力データとともに、本番システムと同じソフトウェアを使用することが理想です。
「適切なデューデリジェンスにより、両者は倉庫の要件を理解し、ニーズに合った自動倉庫ソリューションを設計できます。要するに、計画の当初から的確な問いかけをすることが、自動化プロジェクトに最適な人材とテクノロジーを特定する助けとなるのです。」
AutoSttoreでは、システムコンセプト設計要件フォームを使用して、倉庫の寸法とレイアウト、ビンの数と配分、注文構成、処理時間、求められるパフォーマンス、プロセスの詳細、シフト体制を正確に記録しています。このフォームにより、データ収集プロセスが補完され、利用可能なデータ内に存在する隙間を埋めることができます。
そのデータを分析した結果に基づき、当社独自のAutoStore Grid Designerソフトウェアを使用して適切なグリッドをデザインします。次に、そのデザインをDesign Simulatorソフトウェアへとインポートして、お客様のニーズを満たしているか検証します。さらに、これらのツールからの出力を組み合わせた概念実証用のアニメーションを、当社のパートナーやお客様との詳細な検討に活用します。このプロセスでは、購入契約を締結する前に、AutoStoreが実際にお客様にとって最適なのかについても検証されます。ここからは、必要な情報とそれが必要である理由、そしてさまざまなデータポイントについてAutoStoreがどう計算しているか詳しく見ていきます。
AutoStoreのシステムはモジュラー式で柔軟性が高いので、柱、中二階、その他の既存のインフラストラクチャといった障害物を考慮に入れつつ、倉庫の利用可能な空間にフィットするよう設計できます。垂直方向の空間も最大限に活用できるよう、利用可能な高さも考慮する必要があります。
必要なビンの寸法と数は、保管すべき商品の寸法と数量に応じて異なります。ビンの配分は、ピーク期間を含む1~3か月以上の期間で得られた顧客注文データを用いて、SKUあたりの注文または要求の数の合計に基づいて計算する必要があります。
合計ライン数、または注文ごとのSKUもまた、1~3か月以上の期間から取得した顧客注文データを使用して計算する必要があります。このデータは、最も効率的な注文品ピッキング戦略を決定するのに役立ちます。
AutoStoreシステムのポート能力を計算する際には、ピッキングや商品投入のための処理時間を考慮する必要があります。これにより、システムが必要な量の商品を効率的に処理できるようになります。
AutoStoreシステムに必要な平均パフォーマンスとピークパフォーマンスは、過去のデータから得られた注文ライン数に成長係数を適用した上で決定する必要があります。これにより、システムが倉庫の需要を確実に満たすようにすることができます。
AutoStoreシステムは、注文処理、出荷、VAS、オーダーステージング/ピックアップ、入荷などの他の倉庫業務のほか、コンベア、プットウォール、ピックトゥライトシステム、ロボットピースピッキングアーム、ソーター、適正サイズの梱包機器など、あらゆるサードパーティ技術と統合する必要があります。必要なすべての機器に既存のシステムからシームレスにコマンドを渡せるよう、ソフトウェアにも同様の統合が必要です。
利用可能な労働力を把握することで、AutoStoreを最大限に活用するための人員配置を可能にする作業体制を定義できます。
倉庫やロジスティクスの専門家であれば、自動化プロジェクトの成功は、これまで説明してきたような基本的な事項を前もって質問するところから始まることを心得ています。ベンダーやコンサルタントとの間でこのような会話が出ないようであれば要注意です。適切なデューデリジェンスにより、両者は倉庫の要件を理解し、ニーズに合った自動倉庫ソリューションを設計できます。要するに、計画の当初から的確な問いかけをすることが、自動化プロジェクトに最適な人材とテクノロジーを特定する助けとなるのです。