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2023年6月26日
2023年6月26日

在庫回転率とは何か

在庫回転率とは何でしょうか。それはどのように計算され、どうすれば改善されるのでしょうか。この記事で詳しく解説します。

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在庫回転率の概念はご存知でも、その計算方法や目的を知らない方は多いのではないでしょうか。

在庫回転率は金額や数量で計算することができ、在庫の流れを可視化するために利用されます。在庫回転率を知れば商品の売れ行きを把握できるため、無駄な在庫を持たずに済み、コスト削減にもつながります。

ここからは、在庫回転率の定義、計算方法、在庫回転率に注意を払うことによるメリット、在庫回転率の改善方法について説明します。

在庫回転率とは

在庫回転率は、商品回転率とも呼ばれ、企業の販売活動により一定期間に在庫数がどのように変化し、在庫が何回入れ替わったかを示す財務指標です。売上原価と平均在庫金額を用いて計算する方法と、在庫商品数から計算する方法があり、在庫推移として可視化できます。在庫回転率は、経営戦略や在庫管理の参考となり、企業の経営状況が目標に整合しているかを確認する手がかりとなります。

在庫回転率の目的

在庫回転率の目的は、在庫の動きを可視化することです。一般的に、在庫回転率は低いよりも高い方が良いとされています。

例えば、AとBの2つの商品があったとして、1か月あたりの在庫回転率が「Aは1」「Bは3」と算出された場合、Bのほうが売れていると判断できます。在庫回転率の悪い商品は、保管や廃棄にコストがかかる可能性があるため、企業としては、在庫を溜めないための対策が必要となります。

在庫回転率の計算方法

在庫回転率の計算は難しいと思われがちですが、金額や個数を用いた簡単な計算で算出できます。ここからは、最も一般的な計算方法をご紹介します。

金額を用いた計算方法

在庫回転率は、年間売上原価(販売原価)を平均在庫金額で割ることで算出できます。年間売上原価の計算式は次のとおりです。

「期首の在庫金額+年間の商品仕入高-期末の在庫金額」

売上高の代わりに売上原価を使用する根拠は、平均在庫金額が仕入商品の原価を表しているという事実にあります。一方、実際の売上高は、販売商品の利幅が含まれているため、状況を正確に描写することができません。

例えば、「売上原価 ÷ 在庫金額」の計算式で、在庫金額が100万円、年間売上原価が1,000万円の場合、「売上原価1,000万円 ÷ 在庫金額100万円=回転率10」となります。つまり、在庫はおよそ37日ごとに入れ替わります(365日 ÷ 10回)。

この事例の場合、在庫回転期間を365日の日単位で計算しましたが、月単位で計算したい場合は、知りたい期間に応じて12で割って算出します。

「平均在庫金額」と「棚卸資産」という用語は、時として同じ意味で使われることを知っておくとよいでしょう。

数量を用いた計算方法

数量を用いる場合、一定期間の「出庫総数 ÷ 平均在庫数」で在庫回転率を算出します。

仮に、1年間に出庫された在庫商品の総数が500個、期首の在庫商品の数が100個、期末の在庫商品の数が100個であったとすると、次のように計算できます。

  • 出庫総数=(期首在庫100個 + 期末在庫100個)÷ 2=100個。 
  • 在庫回転率=総在庫数500個 ÷ 出庫総数100個=5。

金額による計算は決算書に基づくので経営陣向けですが、在庫数による計算は従業員でも簡単に行えます。

この計算式に当てはめれば、目標在庫回転率をクリアするために必要な平均在庫量を割り出すこともできます。

在庫回転率と在庫管理の関係

在庫回転率や在庫回転期間を分析することで、適切な在庫管理が行われているかどうかを評価できるようになります。

適正在庫とは過不足のない在庫数を意味しますが、在庫回転率を可視化できれば、現状の在庫管理が適切かどうかが把握できます。 

例えば、平均在庫金額が1,000万円、年間売上高が5,000万円の場合、在庫回転率は5回/年となり、約2.4ヶ月に1回在庫が入れ替わることになります。

年間在庫回転率が高い場合、その企業は効果的な在庫管理を実践し、最適な在庫水準を維持していることが分かります。

適切な在庫日数を計算・設定する方法

在庫日数は、現在保管されている在庫がすべて売れた場合、何日分の売上になるかを表し、「在庫金額(販売価格)÷ 1日の平均売上高」で算出することができます。

在庫日数は業種や商品によって異なるため、自社の販売状況を考慮しつつ、適切な日数を設定することをおすすめします。

リードタイムと在庫回転率

リードタイムとは、製造元に商品を発注してから倉庫に納品されるまでの所要日数を指します。適正な在庫回転日数を維持するには、補充注文のリードタイムも考慮する必要があります。

リードタイムを10日、在庫回転日数を30日と設定した場合、少なくとも10日分の在庫が残っているときに補充注文をする必要があります。また、リードタイムは購入する品目に応じて大きく異なる場合があるため、各商品の所要日数を常に把握しておくことが重要です。

海外からの輸入の場合、海上輸送と航空輸送のどちらを選択するかで、リードタイムに大きな差が生じることがあります。リードタイムの見積もりを誤ると、在庫切れに陥るかもしれません。リードタイムを考慮した上で、商品ごとに適正な在庫回転日数を設定し、欠品が発生しないように管理する必要があります。

例えば、リードタイムが1週間未満と短いにもかかわらず、在庫回転日数が50日と長い場合、その商品の在庫数量が適切ではないのかもしれません。一方で、輸送コストも考慮に入れる必要があります。多くの場合、輸送コストをかけて頻繁に補充注文をするよりも、保管期間が長い方がコストは低くなります。

在庫回転率の把握がもたらす4つのメリット

在庫回転率を把握し、活用することで、収益性の向上やコスト削減につながる経営戦略を実行できます。ここからは、そのような適正管理の具体的なメリットをいくつかご紹介します。

在庫の流れを視覚化できる

在庫回転率は、在庫の流れを可視化し、適切な品質管理を可能にします。在庫が長期になると、商品によっては劣化や賞味期限切れで販売できなくなり、廃棄せざるを得なくなる場合もあります。

どの商品がどのようなペースで売れているかを把握するためには、商品ごとの在庫回転率を感覚ではなく数値として知ることが重要です。

機会損失を防止できる

在庫回転率の高い在庫は売れ筋商品であるため、リードタイムを考慮しながら適切に仕入れることができれば、機会損失を防げるようになります。

機会損失とは、利益を増やすための機会を逃すことであり、経営状況に大きく影響します。利益を向上させるためには、在庫回転率を仕入れのタイミングの指標として活用しながら、経営戦略を実行していくことが重要です。

顧客の求めているものを把握できる

在庫回転率は販売状況によって変動するため、顧客がどのような商品を求めているのかを知ることができます。1年のうち特定の時期だけ売れ行きがよい商品もあり、その時期に何個仕入れるべきかを特定することは、利益を増やす上で重要です。

また、在庫回転率の高い商品は多くの需要があると判断できるため、在庫切れを起こさずに仕入れることができれば、売上増につながる可能性があります。逆に、在庫回転率の低い商品が長期間保管されている場合、保管スペースを圧迫するだけでなく、無駄な保管コストを発生させている可能性があるため、値引きや廃棄を検討した方が得策かもしれません。

例えば、自動キューブストレージ技術を使うなどして保管容量を増やすことで、回転率の高い商品をより多く保管し、顧客の需要を効果的に満たすことができます。顧客のニーズを把握することは、売上を伸ばし、コストを削減するビジネス戦略の考案に役立ちます。

余剰在庫を発生させずにコストを削減できる

在庫回転率を把握することで、適正在庫を可視化できるようになり、在庫過多の問題を回避できるようになります。さらに、数年分の在庫回転率のデータを比較することで、適正在庫量をより正確に把握し、必要な数の商品を仕入れることが可能になります。

余剰在庫を構成するのは、たいてい売れ行きの悪い商品です。そのような商品を大量に仕入れてしまうと、コストのかかる余剰在庫がさらに増える結果となります。コスト削減のためには、各商品の売れ行きを把握することが欠かせません。

在庫回転率を改善する4つの方法

在庫回転率を高め、コスト削減と顧客満足度の向上を実現するためにも、経営戦略に以下の4点を盛り込むことを検討しましょう。

在庫回転率の目標を設定する

目標在庫回転率は、年間目標売上高を目標平均在庫金額で割ることで算出できます。

年間売上目標が3,000万円、目標平均在庫金額が300万円の場合、在庫回転率の目標は10となり、在庫は1.2ヶ月ごとに入れ替わることになります。

従業員のモチベーションを高め、年間の運営方針を決定するにあたっては、同業他社の在庫回転率を考慮しながら、在庫回転率の具体的な目標を設定することをおすすめします。 

リードタイムを見直す

リピーターを増やすには、顧客満足度を高めることが重要です。そのための手段としては、受注から納品までのリードタイムを減らし、商品が顧客の手元に届くまでの時間を短縮することが有効です。 

リードタイムを見直し、短縮可能な業務を見つけ出すことで、即日配送など顧客の納期要求に応えることが可能になります。その結果、在庫回転率が向上する可能性が高くなります。

販売価格を変更する

保管コストを発生させないようにするには、回転率の悪い商品の在庫回転率を上げることが重要です。販売価格を見直し、引き下げることは、そのための有効な手段の一つとなります。 

ただし、大幅な値下げは企業のブランド価値に悪影響を及ぼす可能性があるため、販売価格を変更する際には注意が必要です。また商品を廃棄する場合にも、それなりのデメリットやコストが発生することがあります。

したがって、価格設定や在庫管理については、慎重に検討した上で決定する必要があります。 

倉庫管理システムを導入する

倉庫管理システムには、ロジスティクス業務の効率化を目的とした機能が備わっており、その導入により在庫回転率の向上が期待できます。例として、RFタグというものがあり、これを商品に貼り付け、モバイルRF端末で読み取ることで、商品の個数や保管場所をリアルタイムに把握できます。もちろん、ラベルやモバイルスキャナーを利用することも改善の一手となるでしょう。

倉庫管理が不十分で、商品の品質が劣化したり、在庫の保管場所を間違えたりすると、顧客への納品までのリードタイムが長くなり、在庫回転率が低下するので注意が必要です。

結論

在庫回転率とは、一定期間における売上原価に対する在庫の回転数を示します。在庫回転率は、最適な在庫数を維持し、在庫の流れを可視化し、コスト削減をするための重要な指標となります。この率により、企業の効率性や在庫管理方法に関する多くのことが分かります。また経営陣は自社を同業他社と比較することもできます。ただし輸送コスト、製造元が海外か国内か、あるいは季節的要因によって、単純に比較できない場合もあります。

在庫回転率を向上させるには、目標を設定するだけでなく、リードタイムや販売価格を見直し、最新の倉庫管理システムを導入することも効果的です。

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